国税不服審判所は、いわゆる振り込め詐欺の被害に遭い、だまし取られた金額分の損失は、
雑損控除の対象とはならないとした裁決事例を公表しました。
所得税法第72条に規定する雑損控除は、同条第1項により、「居住者またはその者と生計を一にする配偶者その他の親族で政令に定めるものの有する資産について災害または盗難もしくは横領による損失が生じた場合において」適用するものです。
この事例は、納税者がいわゆる振り込め詐欺の被害に遭い、だまし取られた金額分の損失が、雑損控除制度の趣旨・目的に照らせば所得税法第72条《雑損控除》第1項に規定する「災害または盗難もしくは横領」による損失、または「災害」による損失、「盗難」による損失もしくは「横領」による損失のいずれかの損失に当たる旨を主張して、税務署に申告したものですが、認められなかったため、国税不服審判所に判断を仰いだものです。
裁決では、「災害」、「盗難」、「横領」はいずれも別個の概念だとしております。
その上で、
?詐欺の犯人が指定した口座に振込送金した請求人の行為自体が、請求人の意思に基づいたものだから、損失は「災害」による損失に当たらない
?「盗難」の意義は「財物の占有者の意に反する第三者による当該財物の占有の移転」と解されるが、各振込みが請求人の意思に基づいてなされているから、損失は「盗難」による損失に当たらない
?「横領」の意義は「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をすること」と解されるが、請求人が振り込んだ金銭に対する所有権は各振込みを終えた時点で、その金銭に対する占有とともに詐欺の犯人側へ移転したと認められ、その犯人はそもそも請求人の物の占有者ではないから、損失は「横領」による損失に当たらない
これらのことから、この事例における損失は、所得税法第72条第1項に規定する「災害または盗難もしくは横領による損失」には当たらないとして、納税者の主張を斥けておりますので、ご注意ください。
(注意)
上記の記載内容は、平成24年2月3日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
中野税理士事務所
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